2013年7月16日火曜日

知的生産ツールとしての各電子書籍サービスのデスクトップアプリケーション

電子書籍は、主にタブレットや専用端末で読む物ということになっている。ページをめくったり手にもって読むという紙本のメタファーが再現できるからどうかは知らないが、書籍がパソコンで読めても何も問題はない。研究者が書籍を読む場合は、検索したり引用したり、「生産ツール」として書籍が再利用できれならそれに越したことはない。コンテンツの「消費」はタブレットでも充分だが、「生産」にはやはりPCが適している。

昔読んだ知的生産性向上関連本で次のようなネタがあった。カントの全著作からある単語とその用法を「紙カード(たぶん京大カード)」に抜き出して、それをまとめるだけで研究生活を終えた学者がいて、その分析は後世の学者に任せるというそんな話だった。その本の中では、研究対象のデジタルデータさえあればこんな仕事はGrepを使って一瞬でできてしまう、というようなそんな内容だったが…まあ、それはおっしゃるとおり。

この本はもう捨てたので題名も思い出せない。電子化されていたら該当部分をすぐに抜き出すこともできたのだが、というのはさておき、各電子書籍サービスのPC用(OSX、WIndowsデスクトップ)アプリケーションをいくつか試したので、特に「知的生産」のために「書籍のテキストを再利用する」という観点で結果をまとめてみた 。

<Kindle>
OSX版とWindowsデスクトップ版がある。あまり知られていないことだが、2013/07時点ではデスクトップ版Kindleをインストールしても、日本Amazonのアカウントではログインできないのである。が、Kindleデスクトップ版には裏技とでもいうべきものが存在する。 まず米国Amazonでアカウントを用意する。このときアカウント用のメールとパスワードを日本のものと同一にしておくということ。そうすれば、ログインが可能となり、自分の書籍ライブラリにアクセスできるようになる。


が、残念ながら日本語書籍は利用できない。読めるのは英語の書籍だけだ。加えてテキストのコピーペーストはできない。テキストをハイライトできるだけなのである。


しかし、ハイライトされたりソーシャルメディアにシェアされたテキストは、


からアクセスできて、結果的にコピーペーストが可能となるのである。


<Kinoppy>
Kinoppyのデスクトップアプリケーションは優秀である。OSX版、Windows版があり、当たり前だが普通に購入した日本語書籍が参照できる。そして、テキストは自由にコピーができる。


ユーザの利便性がよく考慮されている。OSX版、Windows版ともにフォントも読みやすい。学術系の本も充実しているので、「生産」をしたいのであればKinoppyを強力におすすめしたい。

<honto>
Windows版のみが利用可能。残念なことにVMware上のWindowsでは、インストールまではできても、書籍を表示しようとするとエラーになってしまう。これは、たぶんDRMによる影響だと思われるが、詳細は不明。


あと、いろんなパターンは試せていないが、リモートデスクトップ系ツールでアクセスされたWindows環境でhontoで書籍読もうとすると、「Protectd by CypherGuard」と文言が出て何も表示されなくなる。これはDRMの影響だろう。また、スクリーンショットをとろうとしても、同じく「Protectd by CypherGuard」となる。


仕方ないので、写真で撮影。文字はギザついていて、どうも読みにくい感が残る。もちろん、テキストのコピーはできない。




<BookLive>
hontoと同じく、Windows版しかない。hontoと同じDRMの仕組みを採用しているようで、VMWare上のWindowsにはインストールできない(hontoはインストールまでは可能だったがBookLiveはインストールがそもそも不可能)。


またスクリーンショットもとれないので、こちらも写真となる。文字はお世辞にも美しいとはいえない。当然テキストのコピーはできない。



<Kobo>
Koboは、電子書籍リーダーではない。書籍の整理をするだけで、書籍を読むことはできない、と思っていたのだが、こちらの記事で読めるようにする設定が判明した。affiliate.confのaffiliateパラメータをRakutenBooksからkobodesktopに変更すればいい。ただ、同記事にあるように縦書き日本語書籍は読めたものではない。また、テキストのコピーはできない。


せめて、普通に読めるレベルに持って行ってもらいたいものだ。ちなみに、Windows8用のKoboアプリもあることにはあるが、日本のWindowsストアからは検索できない。




以下、結論。

研究者が電子書籍を利用する際には、Kinoppy一択。洋書が必要な場合は、Kindleとなる。今回試した範囲では、KinoppyとKindle以外のサービスは使い物にはならない。DRMは何とかして欲しいものだ。

特に学術書というか専門書を「使えるように」して、かつできれば安価で提供するのは、今後の国富のためにも非常に重要だと考える次第。大学の出版部が出しているような本は、電子化して「使える」ようにするべき。国家レベルで税金をぶち込んでも取り組んでもらいたいぐらいである。

さて…Kinoppyの専用eInk端末はソニーReaderということになるようなのだが、バックライトがないのが惜しい。しかし、Evernote連携機能などもあるようなので、これは試さざるを得ない。次バージョンでライトも装備されるということなので、期待を込めて待つこととしたい。